読書記録

本の感想や書評、粗筋、引用などの読書記録。1980年生まれ。

『ヤノマミ』

 

ヤノマミ (新潮文庫)

ヤノマミ (新潮文庫)

 

読まなければ想像できないような世界がこの世にはある。自分が知っていることなんてほんのわずかに過ぎなくて、そのわずかな知識で判断を下している。なんて頼りない判断であろうか。しかし、どこかの誰かが言ったように、読み終えた本を積み上げた高さの分だけ世界がよりよく見えるようになるのも事実と思う。本書はその想像を絶する世界を教えてくれるノンフィクションだ。自分の当たり前が全然当たり前ではない世界である。

本書は、アマゾンのヤノマミという部族と4回に渡り計150日ほど一緒に生活をし、その様子を著者が綴ったもの。「ヤノマミ」とは、彼らの言葉で「人間」という意味である。多くの部族が病気で耐えたり、文明化していくなかで、奇跡的に原始的な生活を維持している。それも1万年も前からである。30人から200人で集団を作り広大な森に分散している。その内の1つの集団に著者は滞在する。

シャノボという大きな家には、家族ごとに囲炉裏がありその近くにはハンモックがつるされている。プライバシーは皆無で性行為も他人から丸見えだという。男は狩りをし、女は畑で働く。時間の流れは穏やかだ。昨日や1か月前、1年前が全て「過去」という一つの概念でくくられる。季節に関する概念はないけれど、50を超える雨を呼ぶ名前がある。

祭りのためにサルを狩りにいく。この集落ではサルを一番多くとった男こそ、いい男なのだという。ただ、なかなか取れるようなものではないらしい。

男は女が好きで、猥談も好きだ。女は、着飾るのが好きで、嫉妬深い。彼女らが日本語で知りたがった言葉は、「美人」と「正確の悪い女」である。文明に関心を示す若者がいる一方で、文明を忌避する年配者。こうした普遍性には安心もするけど、苦笑もしてしまう。人間ってやつは、と。

本書はNHKのドキュメンタリーとしても放送されたようだ。僕は見てないけれど、見てみたいと思う。著者の滞在時は2008年のことである。その後は文明化の波が押しよせてきているという。その後、どうなったのかも気になるところ。