読書記録

本の感想や書評、粗筋、引用などの読書記録。1980年生まれ。

ブラック企業に入らないためにも:『ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない』

 

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない

ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない

 

実家で過ごす年末に読もうと思っていた本を読んだ。再読である。面白かったというのは覚えていたけれど、具体的な内容はさっぱりと忘れていた。それでも読み始めると個性豊かな社員の名前や特徴を思い出していく。

本書は10年間引きこもった著者が、母の死をきっかけにIT企業のプログラマとして働き始め、悪戦苦闘していく様子を掲示板2chに綴ったものの書籍化である。2chのスレッドがそのまま本になっていて、本を読んでいるのにまるで2chを見ているかのようである。

その2chの興奮の書き込みは、本書に花を添えている。著者が書き込む度に掲示板は盛り上がり、センスのいいコメントが笑わせてくれる。書籍化に当たって野暮なコメントは、削除されているのもいい。

絶対に働きたくないような環境なのだが、読む分には楽しい。書名からも分かるように職場はブラック企業である。入社して2週間でリーダーを任されるなんて、普通の会社ではありえないことだ。

本書では最悪な人物から高貴な人物まで幅広いキャラクターが登場する。いずれも嘘のようなキャラクターである。中卒で10年間も引きこもったというレアな経歴の持ち主である著者が、登場人物の中では一番まともに見えてしまうほどだ。スレッドで何度も「神」と連呼される藤田は、その高貴な人物だ。仕事ができてリーダーシップがあり、戦術にたけて人の心理まで把握しているハイスペックな人物である。

その高貴な人物がなぜこのブラックな会社で働いているのかが見所の1つで、彼は信じられないような過去を抱えていた。それだけでも一つのドラマである。

嘘のような職場環境に、嘘のような登場人物、そして嘘のような事実。それらが全て真実だというのだから(多少の脚色はあるだろうが)、面白くないわけがない。

対象読者は楽しみたい人全員であるけれど、とりわけ学生にお勧めである。社会というものがうっすらと分かるし、ブラック企業には入るまいという断固たる決意をすることができるであろう。

ただ書名には続きがある。何度も職場での限界を感じつつも、著者はこの職場でもう一踏ん張りしてやろうという決意をするのだ。なんという不屈の精神であろうか。この著者の成長ぶりも見どころの1つである。学歴がいかに頼りない物差しであるか、そして10年間引きこもったとしてもブラックな職場に適応できることを本書は伝えている。