本書は、世界的ベストセラーとなった子供向けのお金の入門書です。平易な言葉で綴られ、物語形式で進んでいきます。書名にある「マネー」という犬が、主人公の女の子に助言を与え、それに従うことで女の子が成長していく物語です。お金を稼ぐためのステップを一つずつ追っていくのですが、お金のことよりも自己啓発的な内容が中心となっています。自己啓発書を読んだことのない子供は、新鮮な気持ちでワクワクしながら読み進めることができるのではないでしょうか。
自己啓発書の定番である、目標の設定、プラス思考、感謝すること、挑戦すること、などが漏れなく網羅されています。自己啓発書はこうしたことを伝える比喩や具体例が変わるだけで、メッセージ自体はそれほど変わらないものです。本書がすごいのは、それが優しい物語の中に上手くとけ込んでいることです。
本書は子供向けではありますが、大人にも十分な内容でした。自己啓発書を何冊も読んだ自分にも有益と思える指摘がありました。いかに自分が日頃からマイナス思考で暮らしているのかに気づかされました。「やってみる」という一見プラスに見える言葉でも、内心にある「結局は失敗するもの」という影を映し出しているのだとありました。
こうした自己啓発の内容が、最後には投資信託の話まで展開していくのですから、著者のストーリー構成の巧みさも見事です。
印象的だったものを引用してみます。
「・・・。恥ずかしい思いをすることへの不安を乗り越えた人に、世界は開けるの」
●困難や失敗、恥をかくことへの不安から人生を台なしにした人はたくさんいる。そこから逃げたらそれでおしまい。
「もう知っている」と思った瞬間に、学ばなくなってしまうからです。そこにある本当のメッセージに耳を傾けようとしなくなるのです。また、新しいことを学ぶだけでなく、「学んだことを実際に実行する」ということも大事なのです。
最後の引用にあるように、本書のメッセージを疑うことなく、純粋に実行してしまう子供こそが案外上手くいくのかもしれません。子供の自分で読みたい本でした。