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本読みのはしくれ

本の感想や書評、本の案内ブログです。このブログは1980年生まれの男によって書かれています(受動態)。

好感のもてる男:『稼がない男』

エッセイ

 

稼がない男。 (DO BOOKS)

稼がない男。 (DO BOOKS)

 

以前読んだ本書を再読してみた。再読の時、一回目よりも感動が薄れる本もあるけれど、本書は2回目に読んでも良い本であった。面白さは逓減しなかったのだ。

本書は、フリーターとつき合うフリーのライターである彼女自身が二人のことを綴ったもの。同級生である二人は決して若くなく、書いている当時で既に40台後半である。働いて稼ぐことに対して嫌悪感を男は持っていて、正社員になろうとはしない。流されてフリーターになったという感じはなく、自分のポリシーを貫いた結果、フリーターでいるのである。プリンシプルのある男である。

そんな彼らの日常が綴られているのだが、二人は貧しい。貧しいながらも日々の生活を楽しむ二人。周りの友人達の経済力への嫉妬は皆無。周囲からの結婚の圧力も華麗にスルーをし、それでも彼女を幸せにしていると断言する男。そんな二人はとても幸せそうで、幸せの形は人それぞれということを思い出させてくれる。

中年フリーターと聞くとネガティブな印象があるけれど、このよしおという男、憎めないのだ。彼の哲学的な考察を聞き、ユーモアのセンスを見ると、憎むどころか好感すら持ててくる。もっと言ってやってくれという気持ちである。

「人間だって動物の集団なんだから、生物学的に考えても、本来、ちゃんとそれぞれに役割が割り振られているはずなんだよ。だからその中には、金をしこたま稼ぐことが持って生まれた役割って人もいると思う。そういう人はもちろんそれでいい。でも、人知れず曲を作って生きるのが役割の人とか、ひたすら子供に愛情を注ぐのが役割の人とか、普通の言葉では表現できない抽象的な役割を持った人とか、ほかにもいろいろいるわけで、みんながみんな、がんがん働いて稼ぎを増やせばいいってもんじゃないという話さ。ま、ちょっと酔っぱらってますが。あはは」

 

「そっ。だけど、考えてみてよ。根拠がある自信なんて、たいした自信じゃないぜ。だって、根拠がなくなったら、ダメになっちゃうんだから。根拠なんてあろうがなかろうが、そんなものはどうでもいい自信。それが本当にその人を支える自信なのさ」

素敵ではないか?

更に面白かったのは、イソップ童話の『アリとキリギリス』のアリのような生き方をしてこなかったことを著者達が悔いているシーンでは、アリの視点にとらわれ過ぎだと、よしおは言う。キリギリスは自身の生き方に満足していたかもしれないと言うのだ。アリにもキリギリスにも公平な男なのだ。

このカップルなんと、15年以上も続いているのだ。本書は二人ののろけ話と読めなくもない。少なくとも著者が彼を愛していることはひしひしと伝わってきた。続編に期待。