本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『幸せになる勇気』

 

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

幸せになる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教えII

 

本書は、ベストセラー「嫌われる勇気」の続編です。著者によると、前作はアドラーの思想をざっくりと説明するためのもので、本作はそれをどう実践して幸せになるのかを目的に書いたといいます。本作も前作同様、青年と哲学者の対話からアドラー心理学が語られます。前作同様、読みやすいのですが、内容は深いものとなっています。前作の内容をまとめている箇所もあり、アドラー心理学の良さを再認識することが出来ました。

本書では、教師として上手く生徒との関係を築くことが出来ない青年と哲人の対話からアドラー心理学を浮かび上がらせています。そこでは大胆な考えが展開されるのですが、言われてみると確かにと言えるものばかりでした。

哲人曰く、生徒を叱ることは意味がないことと言います。叱っても効果がないのであれば、それは教育上意味のないことの証左であるのだとありました。その究極は、暴力に訴えるものであり、これは最後のコミュニケーション手段だといい、未熟なコミュニケーションだと言います。このことを子供は敏感に察知し、結果未熟な教師を尊敬することはありません。

それでは言うことを聞かない子供にはどうするのでしょうか?

アドラーは、裁くなと言います。そして、教育をする立ち場の人間は、生徒に自立を促さなければならないと述べます。そして、この生徒の自立の手助けを出来たという貢献感こそが幸せの本質だといいます。しかし、実際には、生徒を自立させるよりも依存させることをしています。それは、自分の支配下に置くためでした。支配下に置けば、子供の勝手な判断で失敗をするのを防ぐことができます。これを教育する側の保身だといいます。

そこで、子供には子供自身で決める権利があることを伝えのが教師の役割になります。それを決めるのに必要な材料を提供するのが教育者の役割とありました。「可愛い子供には旅をさせよ」と似ているかもしれません。

縦の関係を否定し横の関係を肯定するアドラー心理学ですから、生徒を褒めることも出来ません。褒めることを認めると、褒められることを目的とした競争が生まれるからです。すると他者を敵視しするようになってしまいます。そこで競争ではなく、協力原理に基づく運営が理想といいいます。

アドラー心理学のキーワードに「共同体」がありますが、アドラーによれば、人間の弱さゆえに人は共同体を作り、協力関係の中に人は生きているといいます。そして、人間は他者とのつながりを求めます。

他者とのつながりを求めるアドラー心理学ですが、他者からの承認は否定し、自らの意思で自らを承認することを肯定しています。これがアドラー心理学でいう「自立」です。この自分で自分を認められないのは、「普通であることの勇気が」足りていないのだとありました。

「いいですか、「人と違うこと」に価値を置くのではなく、「わたしであること」に価値を置くのです。それがほんとうの個性というものです。

思うに、アドラー心理学とは、自分も他人も信じ、自分で運命を切り開いていく力強く生きる哲学です。それゆえに実践は難しく、アドラーもそれが出来るようになるには生涯かかってもいいと言います。

これまで当たり前と考えていた考えを否定されるのですが、こういう考え方もあるのかを目から鱗の落ちる一冊です。