読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

本読みのはしくれ

本の感想や書評、本の案内ブログです。このブログは1980年生まれの男によって書かれています(受動態)。

『介護士からプロ棋士へ』

将棋本

 

介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました

介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました

 

「奨励会」とはプロの将棋棋士養成機関である。この奨励会に入会し4段になればプロ棋士になれるのだが、これには26歳までという年齢制限があって、それまでに4段になれないと退会という決まりがある。そもそもこの奨励会に入るだけでも相当な才能と努力を必要とし、その天才達がしのぎを削る場が奨励会である。

一人一人がプロになる過程はまさにドラマであるが、そのプロになれなかった過程もまたドラマなのである。いや、むしろ奨励会ではプロになれなかった方がドラマになるのかもしれない。現羽生名人や現渡辺明竜王のように、特急で奨励会を通過してしまってはドラマになりにくいのではないのか。彼らの場合、「奨励会は駆け抜けてプロになりました」という一言で十分で、焦点が当たるのはプロ入り後の活躍である。

奨励会に入りプロになれなかった絶望感は凄まじい。それを描いた名作も多い。『将棋の子』『泣き虫しょったんの奇跡』はこのブログでも書いた。

そして、本書は26歳までにプロにはなれなかったが、その後紆余曲折を経て、プロ棋士になった実話である。プロになったルートは瀬川棋士にも似ているのだが、さらにワンステップ踏んでいるだけに、棋士になるまでに時間がかかっている。棋士になったときには、41歳になっていた。しかし、プロになる直前の彼はとても幸せそうであり、仮にプロになれなかったとしても、幸せな生活を送れたのではないかと思ってしまうほどで、生き方の勉強にもなった。

天才の集まりである奨励会からプロに上がれるのは毎年4人だけであり、そのプロになった人は誰もが期待の新人と言ってもいいくらいだと僕は思っていて、例えそれが41歳で、通常のルートとは違った形でプロになったとしてもその気持ちに変わりはない。そして、「将棋本に外れなし」の気持ちにも変わりはない。