読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『真剣師小池重明』

 

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

 

大崎善生による団鬼六の評伝を読んだら、彼の著作のいくつかも読んでみたくなった。その評伝によれば、小池重明は団鬼六以上に破天荒である。本書は、その団鬼六によるその小池重明の評伝である。

タイトルにある真剣師とは、お金を賭けて将棋をする勝負師のことである。1局あたり数十万円が動くこともあったという。今ではいなくなったようだが、30年くらい前までは真剣師がいたようだ。小池重明もその一人である。

小池の将棋の強さは尋常ではない。将棋好きとしては、どうやったらこんなにも強くなれるのかと思うのだが、その答えは本書にはない。とりわけ努力をしているようには見えない。実践の積み重ねが彼を強くしたようだ。小池の将棋の特徴は、序盤がザルで、中盤で局面を難しくし、そして終盤が鬼のように強いというもの。所謂、「序盤、中盤、終盤、隙がないよね」という状態ではない。

そんなわけで、プロ棋士にさえ勝つこともたびたびある。一時は、プロ棋士になることを決意するが、それは叶わぬ夢であった。年齢を過ぎていたことが原因ではない。

原因は小池の性格にあった。彼はぶっ飛んだ性格であり、 他人に迷惑をかけまくる。道徳観念と経済観念が著しく欠けているのだ。駆け落ち。放浪癖。窃盗。借金癖。酒。ギャンブル。などと、典型的駄目人間である。しかし、小池には憎めない所がある。相手をよいしょできるのだ。太鼓をたたけるのだ。それも上手にだ。こうやって相手を立てればいいのかと、勉強になるほどだ。

そして、そんな小池に団鬼六も魅了され、小池と関係を持ち始める。小池の晩年は破滅へと向かうのだが、団との交流はつづく。その交流がおかしい。団と小池の会話なんて、コントである。無茶苦茶な人と無茶苦茶な人が会話をするとこうなるのかと思い知らされた。

団鬼六の本は初めて読んだ。一体どんな文章を書くのかと興味があったが、さすがは作家である。文章は上手く、ユーモアもある。将棋に興味がない人は多少イメージしにくい所があるかもしれないが、それでも楽しいのが本書だ。 将棋界に凄い奴がいたと言っていいのかは分からないが、小池重明は本当にすごい。

将棋関連の本は面白い本が多い。それは僕が将棋ファンだからということも多いに関係していると思うが、それにしても面白いものが多い。