本読み

読書記録。1980年生まれ/男

『翻訳とは何か 職業としての翻訳』

 

翻訳とは何か―職業としての翻訳

翻訳とは何か―職業としての翻訳

 

本書は、あなたも翻訳者になれますという甘い言葉で読者を翻訳産業へと勧誘するものではない。一流の翻訳家であった著者が、本気で翻訳の世界を志す人に向けて、翻訳とはどういったものなのかを書いたものである。

翻訳された本に興味がある人にもおすすめできる。翻訳書には読みにくいものがあるが、その理由も解説されていて、それは翻訳者のせいでは決してないのである。本書を読むことで、翻訳書や翻訳者に対する見方が変わるはずである。

一貫しているのは、翻訳は甘い仕事ではないということ。翻訳の難しさや大変さは度々強調されるし、翻訳の仕事の割の合わなさも指摘する。また、そんな力で翻訳者を目指さないでくれという著者のぼやきもある。そんな力で翻訳を目指すなんておかしいだろうと。翻訳者を目指すならば、まずは英語で100冊読む必要があり、それだけ読んでようやくスタート地点に立てるという。

しかし、厳しいことを言いつつも、翻訳は素晴らしい仕事であることも強調する。著者は、翻訳の仕事を誇りに思っている。難しい仕事なのだけれど、やりがいはあり、あなたが努力を惜しまなければ、仕事はあるし、いい翻訳者になれる可能性もあるという。

翻訳者を目指す人が読めば、「なろうかな?いや、止めておこう。やっぱりいけるかも。」という自問自答を繰り返してしまうかもしれない。

文章はうまく、比喩の使い方も的確である。それゆえに、説得力が増していると思う。