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本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『つなみ 被災地の子どもたちの作文集 完全版』

 

つなみ―被災地の子どもたちの作文集 完全版

つなみ―被災地の子どもたちの作文集 完全版

 

本書は、被災した子供達の作文を集めたものです。子供の目にはこの震災や津波がどのように映ったのでしょうか。無理矢理に書かせた作文ではなく、書きたいという子供達が書いた作文です。本書は、優れたノンフィクションに授与される大宅壮一ノンフィクションを受賞しています。

作文を書くことで嫌なことを思い出してしまう可能性もあると思います。しかし、『その科学が成功を決める』によれば、トラウマ体験を書くということは、心理的にも肉体的にも効果があるそうです。書くことにより出来事に意味をもたせ、解決へ向かわせる力があるといいます。

ポイントは、書くという作業をすることであり、話をするだけではだめだそうです。 話すだけでは、混乱を助長することになってしまうのです。なので、こういった作文を書くのはいいことだと思います。今回作文を書いた人は、後で振り返ったときに書いてよかったと思えるのではないでしょうか。

小学生から高校生までが書いた作文が収められています。高校生にもなると文学的な表現が見られます。ある高校生は、地震があったその日を回想してこう綴っています。

すごく寒かったのを今でも覚えています。しかし、その日の星空はすごくキレイでした。今まで見た星空の中で一番というほどに。
 翌日、目が覚めるとちょうど日がのぼるころでした。その太陽はまるで希望の光のような明るさを放っていました。

自然に翻弄されたばかりなのに、星の美しさを感じ、太陽に希望を見いだす冷静さがあります。

小学3年生の女の子が書いたものは読んでいて、笑ってしまいました。

ママは私と匠真をみるなり、走ってここにきて、私も最初にぎゅ~っとしてほしかったけど、通りすぎて匠真にだきついていきました。

ユーモアのセンスを感じます。まるでコントのシーンですが、小学3年生でもこんなにもうまく描写しています。しかし、この後では残酷な現実が語られています。笑ったあとに、急激に悲しい気持ちにさせられるすごい作文なのです。感情揺さぶられました。

また、母と一緒に逃げる高校生の息子が母を激励するシーンを書いた作文があります。走るのを諦めようとする母に言う息子の台詞がいいのです。

「何ふざけた事を言っているんだ。津波がそこまで来てるんだぞ!走れ!頑張って走れ」