読書記録(書評・感想)ブログ

本の感想や書評、粗筋、引用などの読書記録。1980年生まれ。

『怪魚ウモッカ格闘記 インドへの道』

 

怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道 (集英社文庫)

怪魚ウモッカ格闘記―インドへの道 (集英社文庫)

 

ネタバレの可能性があるので、これから読む人は気をつけてください。だったら書くなと思われるかもしれませんが、分かっていても面白いのです。そこは、ポイントではないと思うのです。ポイントは、本書が面白いということです。

本書での著者の旅の目的は、怪魚ウモッカをインドで探すことでした。ウモッカは、未知動物であり、図鑑にも載っていません。このウモッカが図鑑に載っていないことを、著者は恐る恐る調べています。図鑑に載っていたら既知動物となってしまい、発見の夢が終わってしまうからです。こういう図鑑の使い方もあるのかと感心しました。

ウモッカを探すことになった経緯から、ウモッカに関する情報収集、どのように捕獲をするのかという手配、旅のパートナーの考慮、現地の言語の学習、などと旅の準備は手慣れたものです。そして、その描写も軽快なタッチで描かれていて、読んでいて楽しいです。

例えば、

シーラカンス研究の権威で、元日本魚類学会学長、そして長らく国立科学博物館に勤務している上野輝彌先生もそう感じているようだった。

やっていることは怪しいのですが、こういう本格的な記述が突然出てくるのです。このギャップがいいです。

さらに現地の言葉を覚えるくだりでは、

「この魚を見たことがありますか?」「この魚はよく獲れますか?」「私は、この魚を探しています」「見つけたらすぐに知らせてください」

などと、実際に使うであろう言葉を優先して覚えていきます。役立ちそうな言葉を一直線で覚えようとする姿には感心するのですが、あははという感じもします。

今回の旅のパートナーである友人とインドへと降り立つと大問題が起こります。著者はかつてインドから強制送還をされていました。その履歴が残っており著者はインドへと入国できません。現地でのウモッカ探しは、パートナーに託されます。

それならば、今回の旅は本にならないのではと思いきや、立派な本になっています。現地で起きていたはずの面白さが、アクシデントが起きたからこその面白さに取って代わられたに過ぎません。著者が現地に行こうが行くまいが、今回の調査は面白かったのです。

入国できない著者は、日本へと帰ります。本当に帰ります。それは、それは申し訳なさそうにしています。それでも、この日本での行動も破天荒で面白いのです。新しいパスポートを入手しようと、パスポートの名義変更の可能性までも探すほど著者は本気なのです。「真剣な人は違いますね」という、ある小説のフレーズを思い出しました。

結局、本書で著者が現地で調査をすることはありません。調査は、パートナーが一人で行い、その結果を著者にメールで送る形で行われました。

それで、怪魚は見つかったのでしょうか?

その答えは、ポイントではないような気がします。

謎の独立国家ソマリランド

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 今日発売の著者の最新刊。著者のブログを見ると、面白そうとか、超面白そうという先入観を持ってしまいます。