本読み

読書記録。1980年生まれ/男

『聖の青春』

 

聖の青春 (講談社文庫)

聖の青春 (講談社文庫)

 

 村山聖。先崎学のエッセイを読んで、彼のことは知っていた。20歳の誕生日に「二十歳まで生きられて幸せです」と言ったエピソードが紹介されていたと思う。その彼は、30歳の誕生日を迎えることなく、この世を去っている。それも、順位戦A級に在籍したままで。

本書は、その村山聖の評伝である。著者は大崎善生。将棋界の近くにいた彼だから、また村山とも接触のあった彼だからこそ、ここまで細かいドキュメンタリー風評伝が書けたのであろう。

病気を抱えながら恋愛をするエッセイや小説ならばたくさんありそうだが、本書は病気を抱えて名人を目指す男が主人公である。

将棋に興味を持つ頃には、すでに病気を抱えていた村山。それでも、将棋に関心を持つと、その情熱は抑えることが出来なくなり、自然にプロになることを目指す。そのプロになるために村山は、森信雄に弟子入りする。この森がいたるところで村山を支えている。なかなか出来るものではない献身さを見ることができる。この師弟関係は本書で何度も出てくる。森信雄なくして、プロ棋士村山なしという感じである。

奨励会を脅威のスピードで駆け抜けると、プロになってもすぐに頭角を現す。周りのプロ棋士からも注目される存在となる。谷川は、村山の将棋に対する姿勢を絶賛している。また村山と他のプロ棋士の交流も描かれている。プロの将棋に関心がある人は、とても楽しく読めるところだ。先崎と飲みに行ったり、羽生と二人で定食屋へ行ったり、佐藤康光を訳もなく嫌ったりしている。

そしてついにはA級まで上り詰めるが、A級陥落という悲劇にも遭遇。しかし、そこからまたA級へと復帰。それでも、村山の体は限界に達してしまう。その後の死へと向かう過程の描写は、とてもせつない。

本書を読み終えて思うのは、限られた時間の中で夢を叶えようとする人間のすさまじさである。期限があるから必死になれる。そしてその期限が人生のリミットとイコールであるならばなおさらである。

最後に余談だが、本書は村上が指した棋譜がいくつか載せられている。なかでも、丸山戦の棋譜は並べて欲しいとのリクエストまであった。後で、並べてみよう。