読書記録

本の感想や書評、粗筋、引用などの読書記録。1980年生まれ。

『オール・イン 実録・奨励会三段リーグ』

 

オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ

オール・イン ~実録・奨励会三段リーグ

 

本書を読むのは2度目である。内容を思い出せなかったので、もう一度読んでみた。一度目に読んだ時とは、まったく違う感想を持った。著者はもうこの世にいないのである。

本書は、将棋棋士を目指したがその夢破れたものの手記である。16歳という若さで3段リーグに昇段した著者は、その3段リーグに10年近く在籍。しかし、規定の年齢までに4段に上がることができなかった。

こうして夢破れて3段リーグを去ったものの取材は通常困難を極めるという。アイデンティティであった将棋を失ったものが、それについて語りたがらないからである。そういう意味ではあの傑作『将棋の子』は例外であることを、著者も認めている。本書は、その挫折を自らが描いたという点で例外であろう。

プロ棋士になれなかった者にとって、奨励会時代とは「灰色の青春」であるのかもしれない。僕はこれからしばらく、その大いなる挫折について、振り返っていきたいと思う。

プロ棋士になれなくても人生は続く。確かに大きな挫折とは思うけれど、それでも生きていれば、それなりに楽しむことだってできる。挫折があったからこその素晴らしい展開だってあるかもしれない。

なのにである。

奨励会を退会した後に著者を待っていたのは、ステージ4の舌ガン宣告である。著者は、10代の頃から酒を飲み、たばこも吸ってきた。それがガンの原因となったのかはもちろんわからない。

著者は成功率50パーセントの手術に挑む。手術は成功。それでも著者自身は自身の余命が長くないことを悟っている。僕が最初にこの本を読んだとき、著者はまだ生きていた。しかし、ウィキペディアを見ると、2015年になくなっている。

その著者が言ったという最後の言葉をウィキペディアから引用。

「生んでくれてありがとう。30まで生きて良かったよ。」

30まで生きられて幸せですといった村山聖を思い出した。

 

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将棋関連のノンフィクションでは最高傑作と思う。将棋関連に限定しなくても最高傑作と思う。

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プロ棋士になったものの、病気で夢破れた話。こちらも大崎善生が書いた。僕にとっては文豪である。