読書記録

本の感想や書評、粗筋、引用などの読書記録。1980年生まれ。

『うつ病九段 プロ棋士が将棋を亡くした一年間』

 

うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間
 

著者の先崎9段の棋戦への休場が発表されたとき、なにかの病気だと思った。しかし、それはうつ病以外の病気で、まさかうつ病による休場とは思わなかった。本書は、そのうつ病発症の過程からその回復していく模様を先崎自身が綴ったもの。

うつ病の大変さは本書を読むとよくわかる。周りのサポートが充実している人間のうつ病でさえこれほど大変なのだから、うつ病は怖い。何もする気が起きず、お店に入るのを躊躇し、将棋は弱くなり、「死」が頭をよぎる。明るい先崎を知っている分だけに信じられない話である。

将棋ファンかつ先崎ファンの自分の関心の矛先は、うつ病だけではなく、棋界の人間模様にも向かう。他棋士との交友関係や、彼らの人柄を知るのは楽しい。佐藤康光9段の会長としての悩みも描かれていて、これは本書でしか知ることができないことと思う。おかけでまた少しだけ将棋界に詳しくなった。

最後には先崎の努力した姿が綴られていて、意外な一面を知ることができた。しゃべりを上達させるために落語家の下に通い、どもりを直すためにはスクールに通ったという。中学でのいじめの体験も記されていた。こうした苦労を乗り越えることが出来たのは、アイデンティティである将棋があったからである。