読書記録

本の感想や書評、粗筋、引用などの読書記録。1980年生まれ。

『定年後に読みたい100冊』

 

文庫 定年後に読みたい文庫100冊 (草思社文庫)

文庫 定年後に読みたい文庫100冊 (草思社文庫)

 

書評集を読んでも読みたい本が増えるだけだから、本書はずっと読まないでいた。ましてや好きな作家の書評集である。しかし、読みたい本が増えてもいいかという気持ちで読み始めた。案の定、読みたい本は増えた。

全部で100冊と謳ってあるが、そこから派生して本は紹介されていくので全部で数百冊はあるだろう。この100冊は執筆に当たり、全て再読したというのだから驚く。また国内外のドラマへの言及も多くドラマ案内としても使える本だ。充実した定年ライフで何よりである。

紹介する中で自ずと現れる著者の価値観に好感が持てる。自分の好きな本が選ばれていると嬉しくなる。絶賛している本の中でもダメな部分はダメだと指摘するのもフェアであった。絶賛していた本の著者による立場の低いものへの乱暴な態度を知ると、その作家を見限ってしまうのもいい。本書は、一貫して皮肉な言い回しがあるが、いちいち本質をついているように思う。随所に見られる巧みな言い回しは、読書のおかげか、才能か。

余計なことだろうけど、天野がアントニオ猪木ファンというのが玉に瑕。そこだけが理解できない。(三浦知良が田原俊彦のファン、というのもがっかりである。清原和博が長淵剛を尊敬しているというのは、むべなるかな)。

最後の章で最もお薦めの9冊が紹介される。しかし、その前の章では駄作を厳しく批判する。最後に飛躍する前にここで一旦かがむという作戦だろうか。高く飛ぶために、ためが必要なのは分かるが、先に飛躍し過ぎた感がある。K点超えであり、危険であった。本書のハイライトはここではないか。直木賞作家の本を痛烈に批判している。その本が私の好きな本であったならば著者を見限ったかもしれないが、その主張に同意した私は、読んでいて胸がすく思いがした。あっぱれ。