読書記録

本の感想や書評、粗筋、引用などの読書記録。1980年生まれ。

『英語のセンスを磨く』

 

英語のセンスを磨く――英文快読への誘い (岩波現代文庫)

英語のセンスを磨く――英文快読への誘い (岩波現代文庫)

 

書名は「英語のセンスを磨く」となっているけど、読んでみると、「翻訳のセンスを磨く」といった方がより適切な気がする。まあ、翻訳のセンスは英語のセンスに含まれると言われればそれまでだけれど。

全部で30の文章が取り上げられていて、それをどう翻訳するのかを考えていく。その30題はバラエティに富んでいて、新聞や雑誌の記事、エッセイ、小説、戯曲、伝記など様々である。この30題はどれもタフな文章ではあるけれど、含蓄のある文章でもある。この文章を読むためだけに本書を読めと提案するのはさすがに言い過ぎだろうけど、そう提案したくなるほどである。英語自体はとても難しいが、翻訳された日本語は素晴らしい。これほど難解な英文を奇麗に訳すのはさすがである。

英文の解説はあるけれど、読者がひっかかりそうな所だけをターゲットにしているので、文法知識が曖昧で知っている単語が少ない人向けの本では決してない。

正しい訳を作るのには、コンテクストが重要だと何度も繰り返される。辞書に載っている意味を絶対視するのではなく、その文脈にふさわしい訳語を自分で考えて生み出す必要があるという。他にも、文法の知識、常識、論理の力が、英訳には必要になるとあった。翻訳のやり方を学べる本であると同時に、翻訳の厳しさも学べる本である。