読書記録(書評・感想)ブログ

本の感想や書評、粗筋、引用などの読書記録。1980年生まれ。

『シャーロック・ホームズの思考術』

 

シャーロック・ホームズの思考術 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

シャーロック・ホームズの思考術 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 

本書は、コナンドイルが生み出したシャーロック・ホームズの思考を案内しながら、心理学の知見を紹介しています。著者はコロンビア大学で心理学の博士号を取得していて、本書はニューヨークタイムズベストセラーとなっています。

私たちは普段漠然と物事を眺め、無意識の内に物事を判断していますが、本書はそうした「マインドレスネス」を普段の生活で意識化させようとするものです。そのお手本としてシャーロック・ホームズが、その反面教師としてワトスンが登場します。

本書では、人間の性(さが)とも言うべき性質が、何度も指摘されています。そうした性を自覚するだけでも、陥りがちな先入観を訂正できるようになりそうです。例えば、何か悪いことが起こった時、因果関係を無視して物語を作りたくなるのが人間です。つまり、原因を自ら創造し、自らを納得させたくなるのですが、本書を読むことで、これは例のあれではないのかと一歩立ち止まって思考できる気がします。

自分自身と自分の考えに懐疑的であることは重要なのですが、どうしても自分が正しいと思ってしまうのが人間です。成人は一面的な論拠を、両面がある根拠よりも上だと判断し、一面的な論拠を優れた思考を意味するものと捉える傾向があるようです。実際の物事は裏表どころか、多面体であったりするのですから、いかに大人の判断が危ういものかが分かります。それならば「王様は裸」だと本質を見抜く子供の方が優れているのかもしれません。

他にも、人間には直感の間違いを認めるのを嫌う傾向があることや、脳の振る舞い方は持ち主の考えた方にきわめて感化されやすい、といった刺激的な話がありました。決して、自分を卑下しないようにしようと思いました。