読書記録

本の感想や書評、粗筋、引用などの読書記録。1980年生まれ。

『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』

 

消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

消された一家―北九州・連続監禁殺人事件 (新潮文庫)

 

本書は北九州で起きた連続監禁殺人事件の事実に迫ったノンフィクションである。事件が発覚したのは2002年のこと。当時は大騒ぎになったはずだけど、私にはその記憶が全くない。この事件のことを知ったのは、先日、フジテレビの番組「ザ・ノンフィクション」に、この事件の加害者である松永太と緒方純子の息子がインタビューに答える形で出演していたからである。そのインタビューは、彼が自分の両親に関する記憶や自分の生い立ちを語るという異例のものであった。そこで、この事件に関心を持ち、アマゾンで探してみると、本書の評判が良かったので読んでみることにした。

主犯は、松永太。極悪人である。この世に悪魔がいて本書を読ませたら、「僕よりひどい」と言うのではないか。それほどに凶悪なのである。そして、この主犯を助ける形で事件に携わったのが、内縁の妻である緒方純子である。主犯を助けたという事実は確かにあるけど、一面では一番の被害者でもある。

弱みを握られた緒方家は、純子の母と父、妹、その旦那、その子供二人の計6人はマンションに監禁されるようになる。家族という強いはずの絆は、松永の前ではあまりにももろかった。松永の巧みな話術に惑わされ、虐待を受けた家族は、一切無抵抗である。

松永はこの監禁した家族に序列を付け、一番下のランクにいるものをメインターゲットとして虐待を加える。一番下のランクに落とされてたまるものかと家族同士が争いあったというのだから胸がつまる。

監禁される中、通電による電気ショックで正しい思考ができなくなった緒方一族は、家族の誰かが死ぬことも仕方がないことと考えるようになる。絶望に陥ると、人は正しく思考できなくなることがよく理解できた。恐ろしいものだ。

家族が次々に死んでいく描写は、圧巻である。衰弱死もあるが、ほぼ家族の手で殺される。子供2人が死ぬシーンの切なさはどう形容できようか。誰かが死ぬと、家族の手で遺体は解体されていく。それには一切携わらず、死んだことの報告を受けるだけの松永。そして、監禁された6人は誰もいなくなった。

この家族が監禁される前、松永は一人の男を監禁し、殺害している。その男の娘も口止めのために監禁していたのだが、この少女が脱走したことで事件は明らかになった。

今まで読んだ事件ものノンフィクションの中では、本書が一番強烈であった。引用しようとした箇所も、あまりにも残酷なので引用を控えた。