本読み

読書記録。1980年生まれ/男

藤井聡太君と将棋界の偉大な記録

藤井聡太君の連勝が止まりませぬ。史上最年少でプロ棋士になったことや、デビューから28連勝の記録はなかなか破られそうにない記録である。けれど、将棋界には破られそうにない記録や信じられない記録がたくさんあることを考えると、彼の記録もいつかは破られるのかもしれない。そうした記録のいくつかを紹介してみる。

その大記録の筆頭は羽生善治の7冠達成である。将棋界には7つの大きなタイトルがあり(今年度から叡王戦が加わり8つに)、その7つのタイトルを羽生が一人で独占していた時期があったのだ。空前絶後の記録であり、達成されたことが信じられないような記録である。この頃の羽生はまさに無敵で、スターを食べたマリオである。羽生が7冠を達成したのは1996年であり、この時もメディアで大きく取り上げられていた。当時将棋に関心のなかった僕でも覚えているくらいである。

この7冠を取った過程もすごい。実はその前年に羽生は既に6冠状態となり、7つ目のタイトルにも挑戦していたのである。しかし、この王将戦では谷川に敗れ、7冠を達成することはできなかったのだ。当時僕がそれを見ていたら「2度と7冠のチャンスはないな」と思っただろう。

ところがである。羽生は翌年保持していた6つのタイトルを全て防衛し、さらには再び王将戦の挑戦者にもなりそこで前年のリベンジを果たし、7冠を達成するのである。ミッションクリアである。一丁あがりである。

こうして見ると複数タイトルを保持するのは当たり前のように思えるかもしれないが、そんなことはない。将棋界では、1つタイトルを取れば一流と呼ばれ、10個も取れば超一流、歴史に名を残す棋士扱いされる世界である。これまで一度に複数のタイトルを保持した棋士はほんの僅かで、3冠以上を達成したのは8人しかいない。

その羽生が獲得した総タイトル数は97期で、これは歴代1位の記録である。現役で2番目に多くタイトルを獲得している谷川が27期であることを考えると、その数がいかにずば抜けているのかが分かる。しかし、この記録は7冠を達成するよりも難易度は低いのではないか。藤井君かどうかは不明だけど、いつかは破られるかもしれない。

羽生について書こうとしたのではないが、気がつけば羽生を語っている。羽生を避けて将棋を語ることは難しい。映画『聖の青春』で羽生が目立ってしまったのも仕方がないなと思えてくる。

他の記録としては、故米長邦雄の49歳での名人獲得や故大山康晴の69歳でA級在籍なんかもすごい記録だと思う。将棋はスポーツ選手よりも年齢がハンデにはならないが、40代も後半になれば衰えてくるのが一般的である。しかし、この二人は例外があることを証明している。現に羽生も46歳で3冠を保持している(また出てきた!)。

仮に藤井君が69歳まで現役バリバリでいたとしたら、羽生の記録だって更新できるかもしれない。いやいや、そんなことより、69歳まで現役でいたら半世紀くらい応援できるのである。

実際藤井君がどれくらいのタイトルを獲得できるのかは全く分からない。すごいポテンシャルを持っていることは間違いないけれど、実際にどうなるのかは見てみないと分からないし、それを見るのが今後の楽しみでもある。

注目の29連勝を賭けた竜王戦決勝トーナメントでの増田4段との対局について書いてみたいが、長くなったので次の記事で。

 

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先崎のエッセイを読むと将棋観戦がより一層楽しくなる。先崎には、ジャンジャンとエッセイを書いて欲しい。