本読み

読書記録。1980年生まれ/男

人間って恐ろしい:『でっちあげ』

 

でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相 (新潮文庫)

でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相 (新潮文庫)

 

本書は2003年に殺人教師として世間を騒がせた福岡県の小学教師が実は全くの無実だったという、その軌跡を追ったノンフィクションである。世の中の理不尽さと人間の豹変ぶりという自分の人生では決して体験したくないことを疑似体験することができる。

わが子が担任の教師から暴力を振るわれれていると、無実の教師を犯人にしたてあげるモンスターパーレントが恐ろしい。さらに恐ろしいことに、彼らの傍若無人ぶりはエスカレートしていく。なかなかの悪党である。「幽霊なんて怖くない。人間が一番怖いと思っているので」という話を思い出した。彼らは、平気で何度も嘘を繰り返し、多くの人を傷つける。絶対に関わりたくないタイプである。実際にこの学校の保護者も彼らを避けようとしていた。

モンスターパ―レントも酷いが、学校の対応もお粗末であった。親からの苦情があればできるだけ隠密にことを運ぼうとする。そのためには一人の教師が多少の犠牲を払うことになってもまるで構わないかのようだ。モンスターパーレントの要求に答え続ける学校のせいで、教師の授業には監視がつき、挙句6か月の停職処分という重い処分が教師に下される。

隠密どころか事件はマスコミに取り上げられ、裁判にまで進行していく。裁判は刑事訴訟ではなく、民事訴訟である。刑事訴訟では証拠不足から勝ち目がないという打算があったのだ。この民事でどういった判決が下されるのかは見どころの一つだ。

もしこの教師と同じ立場にたたされたら、「なんでこうなっちゃったの?」というまさかの気持ちでいるしかないだろう。本書の教師も自分が暴力教師にされていることに自分で驚いてしまっている。

モンスターパーレントの出現により学校が弱い立場に立たされるようになったことも本書では描写されている。僕が学生の頃にこの言葉はなく、学校の立場も今ほど弱くはなく、保護者もそれなりに学校のことを信用していたと思う。その学校への信頼が低下した今、本書の学校もそれ以外の対応をとるのが難しかったのだろう。それでも教師や子供を守ろうとする学校であって欲しいものである。

 

こころ 坊っちゃん (文春文庫―現代日本文学館)

こころ 坊っちゃん (文春文庫―現代日本文学館)

 

自殺してしまう先生も「人間はいざとなると豹変するから恐ろしい」というようなことを言っていた。

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人間が怖かった人。

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それでも人間を信じた人。