本読み

読書記録。1980年生まれ/男

ラマンチャの男:『LIFE アンドレス・イニエスタ自伝』

 

LIFE アンドレス・イニエスタ自伝

LIFE アンドレス・イニエスタ自伝

  • 作者: アンドレス・イニエスタ,グレイヴストック陽子
  • 出版社/メーカー: 東邦出版
  • 発売日: 2017/02/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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2つ前の記事でも言及したイニエスタの自伝を読み終えた。書名は自伝となっているが、評伝の色が強い。イニエスタに関係する人達の証言からイニエスタがどういう人なのかを浮かび上がらせている。その証言者は、家族、友人、チームメート、監督、チームスタッフと多岐に渡る。本書においてイニエスタは完璧主義者と何度も形容されていたが、本書にも強いこだわりがあるようで完成までに数年を要している。

サッカーをするのはイニエスタだが、その家族も一緒に戦っていた。12歳で家を離れることになったイニエスタとの別れは相当に辛いものであった。イニエスタはバルセロナがあるカタルーニャ州の出身ではなく、ラマンチャ州で生まれ育った。イニエスタが孤独と戦う中で、家族は近所の人からの悪評に耐え忍んだ。努力は実りイニエスタは順調にステップアップをしていく。サッカーの実力が足りないという悩みはイニエスタには無縁である。

卓越したテクニックは子供の頃からのもので、テクニックを絶賛する証言は枚挙に暇がない。その一方でもう一つ絶賛されていたのが、彼の人格の素晴らしさである。決して目立とうとせず、常に謙虚の姿勢が度々言及される。寡黙だが、親しい人達にはジョークも飛ばす。そのジョークの切れは、彼のドリブルの切れと同じくらいに鋭い。

要所要所の試合の詳しい叙述もあり、イニエスタがどんな気持ちで、またどんな状態で試合に臨んでいたのかを知ることができる。2009年のチャンピョンズリーグの決勝戦では、ケガを押しての出場であった。シュートは打ってはいけないという状況で出場していたのだ。それでも終盤、彼はシュートを打ってしまうのだが、ケガのことを知っている人の慌てぶりがおかしい。

『とんでもない!なんてことをしてくれたんだ、アンドレス!もうだめだ!やってしまったな。これで終わりだ。筋肉を負担をかけてしまった』

こんな状態で出場していたのだが、相手のマンチェスターはケガのことを知らなかったという。それでもそれなりに活躍してしまうイニエスタ。この試合も含め、何度か昔の試合を見たくなったが、ユーチューブで実際に見れてしまうのだから便利な時代だ。他のチャンピョンズリーグ決勝やワールドカップの決勝やユーロの試合も取り上げられていた。

面白かったのは、イニエスタの家族が大事な試合の大事な場面を意図的に見ていなかったこと。怖くて見られないのである。スタジアムにいても、PK戦になると席を外したりもする。ちなみにスペイン代表のゴールキーパーのカシージャスの母は、PK戦の時にトイレに閉じこもったという。選手の家族もドキドキなのである。

 イニエスタも今年で33歳である。すでに4度のチャンピョンズリーグを制覇している。信じられないことに今年もまだチャンスがある。パリサンジェルマンとのセカンドレグにおいて6-1で勝つというとんどもない逆転劇があったのだ。あれはすごい試合であったが、あれで運を使い果たしていないことを祈る。