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本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

やくざの日常を描く:『ヤクザライフ』

 

ヤクザライフ

ヤクザライフ

 

本書はやくざの日常生活を追ったルポタージュである。著者はやくざの取材を専門としているが、組織同士の抗争には関心がなく、関心があるのは彼らの日常生活だという。なので、本書にもそうした抗争や、やくざの組織図などは出てこない。出てくるのは、著者が彼らに密着しそこで見たものや聞いたものである。そして、この密着度合いが飛び抜けているが故に、面白いエピソードであふれている。本来警戒すべき彼らの日常を軽快なタッチで描いている。最後に「落ち」のつく筆の進め方もいい。

度々言及されるのは、最近の若いやくざの駄目さ加減である。一般社会で言われるように、この世界でもまた「最近の若い者は」から始まる苦言が呈される。怒るとすぐにやめてしまうから「怒る時は優しく」なんて普通の会社と同じである。そもそも組織に入ったものの多くが止めていく世界だという。

本書には笑えるやくざがたくさん登場する。親分から運転を頼まれるとペーバードライバーかつゴールド免許を理由に運転を拒むもの。ゆとりやくざである。相手を脅すためにペンチを買ってこいと指示されたのに、聞き間違えて電池を買ってきてしまう緊張感のないもの。さらには、やくざなのに実家住まいのもの。その実家住まいやくざは家庭訪問までされてしまうのだ。それに嬉々として著者は同行する。

頻繁に暴力の描写があり、滅茶苦茶な人物もたくさん出て来る。怒らせると怖いのは想像の通りだ。彼らと一緒にいることでとばっちりを受けることも多い著者なのだが、その好奇心を押さえることは出来ず、やくざから連絡があれば現場へと駆けつけてしまう。指詰めにも著者は立ち会うくらいだ。この本来緊張すべきシーンでさえ面白い現場になってしまうのは著者のおかげであろう。