本読み

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1ヒーロー記者:『騙されてたまるか』

 

騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

騙されてたまるか 調査報道の裏側 (新潮新書)

 

男らしい書名だが、著者も男らしい。その著者は記者である。納得いかないことは自分でとことん調べ、おかしいことはおかしいと声高に言う。いくつもの事件を例に、その捜査のおかしさや、制度のおかしさを叙述していくのが本書だ。自分の目で見て、自分の耳で聞き、自分の頭で考えることが大事だと著者は言う。それが、情報で錯綜する現代を生き抜くレーダーなのだ。そのレーダーを身につける一助になることが本書の趣旨だ。

日本で犯罪を犯した外国人が国外に逃亡してしまった場合、日本ではシステム上どうすることも出来ないのだが、著者は諦めない。その犯人を追って地球の裏側ブラジルまで取材に行く。どこにいるの不明な犯人を追いかけ、実際に見つけ出すのだから凄い。それも一人ではなく、3人もである。その著者の行動のおかげで、犯人達はそれなりの刑罰を受けることになる。天晴れである。

有名な足利事件にも著者は絡んでいる。えん罪として有名になった事件である。これを報道したのも著者だ。このえん罪を報道する前の段階で既に真犯人の目星までつけていたという。そこまでして、ようやく報道できるのだ。

こうした当局の発表に依存しない報道のことを調査報道というが、これには取材の手間がかかる。それでも、真実を伝えるのが記者の役割だとと著者は言う。著者自身がそれを実行してきたことは、本書を読めば理解できる。

上で見たようにシステム上仕方がないからとか、裁判所の判断だからと言って著者はそこで思考を止めることはない。あくまでも正しいこと、真実を探すことに徹するその姿はまさにヒーローだ。そのヒーローが際立つ時、日本の司法、警察、メディアが頼りなく映し出される。