本読み

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恐ろしかった:『詐欺の帝王』

 

詐欺の帝王 (文春新書)

詐欺の帝王 (文春新書)

 

反社会的勢力ジャーナリストの溝口敦が、振り込め詐欺の帝王に取材したことで書かれた特異な本だ。振り込め詐欺の成立からその発展、その仕組みやグループの内部事情が描かれる。もちろん当の帝王の名前は仮名となっている。この帝王、結局逮捕されることもなく、詐欺の世界からは足を洗っているようだ。

すさまじいのは、詐欺グループ幹部クラスの給与だ。彼らの月収は3億円以上であるという。もちろん無税である。

それでも、割に合わない仕事と思う。銀行には預けることができないので、お金の管理が大変だ。税務所を警戒し、金の使い道は遊ぶことくらい。仲間からの裏切りも警戒しなくてはならない。強盗に遭っても、警察に訴えることもできない。現にこの帝王、強盗傷害に遭い、5000万円程を奪われていた。そして、常につきまとう逮捕の危険性。罪悪感が彼らにあるのかは不明だが、あればそれにも悩まなくてはいけない。だからペイしないのだ。

恐ろしかったのは、ある犯罪組織の殺人事件の殺害シーンの描写である。そのシーンを想像すると、本当に怖い。犯人と被害者の殺害場面での会話が生々しく、本書を読み終えてもそのシーンが頭から離れなかったほどだ。実際にあったとは信じられない。「事実は小説よりも奇なり」である。ちなみにこの実行犯は逮捕され死刑が確定しているが、その主犯者は逃亡中だという。

こういうノンフィクションを読むと、自分の知らない所ではとんでもないことが起こっていることに気づかされる。こういうアンダーグランドの世界って怖いのだけれど、つい覗いてみたくなるのだ。