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本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『編集者T君の謎』

 

編集者T君の謎 将棋業界のゆかいな人びと (角川文庫)

編集者T君の謎 将棋業界のゆかいな人びと (角川文庫)

 

著者である大崎善生の小説はこのブログで4冊も紹介をした。今回で5冊目である。一番多く紹介している作家かもしれない。しかし、今回は小説ではない。エッセイである。2002年に週刊現代で連載していたエッセイを再編したものである。

実はこの本、ブックオフで見つけたのだ。内容は将棋界のゆかいな人々を綴ったもの。著者がエッセイを書いているとは知らなかった。エッセイだとどんな感じになるのかと読んでみたのだが、驚いた。

こんなにもユーモアのセンスのある人だったとは。絶版になっているけど、アマゾンで見ると電子書籍で復刊している。それはそうでしょう。これだけ面白いのだから。

著者は将棋連盟の編集長であった。それ故に、将棋界の様々な出来事、そして愉快な棋士達を間近で見ることができた。将棋のエッセイと言えば先崎学であるが、どこか彼のエッセイのテイストを思い起こさせる。人を食ったような態度や仕事を忘れ酒を飲む様なんかは、そうだ。その先崎も本エッセイに登場する。とんでもない小学生だと思った。他にも、多くの棋士のことが書かれている。かつての大御所棋士の逸話もあった。書名にもなっている編集者T君には、謎の面白さがあった。エッセイ好きは楽しめると思う。

エッセイ好きだけではなく、将棋界に関心がある人も楽しめる。当時の将棋界ではこんなことがあったのかと感慨深かった。将棋を世界に広める動きなんかはこのエッセイを読むまでは知らなかった。また、女流棋士のことに触れていて、その方面にも精通しそうである。そして将棋界のぬるま湯な部分の指摘も公平であった。

惜しむらくは、将棋連盟から著者はすでに去っていること。彼の将棋界のエッセイはもう期待できないのである。