読書記録(書評・感想)ブログ

本の感想や書評、粗筋、引用を自由に書く読書記録。1980年生まれ。

『坊っちゃん』の朗読

 

坊っちゃん 上巻 [新潮CD]

坊っちゃん 上巻 [新潮CD]

 
坊っちゃん 下    新潮CD

坊っちゃん 下  新潮CD

 

坊ちゃんを朗読で聞いてみた。新潮社のCDで、朗読は風間杜夫である。

小説の朗読を聞くときには、一度読んだことのある小説がいい。初めて読む小説を朗読で聞くと、筋を見失う可能性がある。その点、この小説は何度か読んでいるのでその心配はない。ただ、聞いて楽しむだけだ。

冒頭からこの小説は最高である。「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。」と、自分がいかに無鉄砲であるのかというエピソードから小説ははじまるのだが、その描写がおかしい。坊っちゃんは新築の2階から飛び降りて腰を抜かしてしまい、親父に「腰を抜かすやつがあるか」と怒られるのだが、それに対して、「この次は抜かさずに飛んでみせます」と威張ってみせる。
 
このまっすぐな性格は、赴任先の中学でも変わらない。生徒に対する遠慮などは一切なく、我を通しまくる。同僚にだって、媚はしない。あくまでも、自分に正直に生きる。小説では、「竹を割ったような性格」と自分のことを形容している。
 
そんな性格が災いをして、赴任先の中学でも揉め事を起こす坊っちゃんだが、最後まで自分を貫き通し、悪い輩をやっつける。坊っちゃんも迷うことはあるのだが、それは一体誰が善人で誰が悪人なのかというところで悩むのだ。悪人が定まれば、行動で迷うことはない。この辺りも、すがすがしい。
 
そして、その性格がにじみ出ているかのような文体もいい。坊っちゃんのキャラにピッタリである。一人称には「オレ」を使い、気に入らない輩には、「~のくせに」や「生意気だ」を何度も繰り返す。
 
また忘れてならないのは、坊っちゃんの家の下女であるキヨである。このばあさんが小説の中でいい味を出している。このキヨは常に坊っちゃんの見方であり、その愛情は異常なほどである。そして、その気持ちは坊っちゃんにも伝わっていて、「下女コンプレックス」では疑ってしまうほどキヨのことを考えている。そして、そのキヨの死を伝えて小説は終わる。
 
どこかの解説で「この小説は勢いよく始まって、静かに終わる」と述べられていたけれど、なるほど言われてみればその通りである。
坊っちゃん (新潮文庫)

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