本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『またやぶけの夕焼け』

 

またやぶけの夕焼け (集英社文庫)

またやぶけの夕焼け (集英社文庫)

 

著者初の小説である。著者のノンフィクションでは散々笑わされてきたが、小説でも随所に著者らしさが見れた。何げない描写がとても面白い。主人公が焦っている場面の描写は特によかった。

「またやぶけ」とはなんぞやと思っていたが、読んでみると納得できた。「また」と「やぶけ」が組み合わさっていたのだ。日本語難しいね。

主人公の友達のかっちゃんがとても魅力的である。かっちゃんは、かっちゃん軍団というものを形成したそのリーダーである。相撲をやる時には、「相撲は遊びじゃねえんだ」と主張し、ただの遊びを真剣勝負に変えてしまう。かっちゃんは、「遊びじゃねえんだ」と付け加えて、どんな遊びも真剣なものに変えてしまうのだ。「真剣は人はすごいですね」というある小説のセリフを思い出した。

妥協を知らないかっちゃんは、やると決めたからには徹底的にやる。それにメンバー達もつき合わされるのだが、次第にその無茶ぶりが心地よくなってきて、メンバー全員がノリノリになってくる。主人公にいたっては、「当たり前だろ、ゴルフは遊びじゃねえんだ」とかっちゃんのようなことまで言い出す始末。

終盤には、軍団の終わりが近づいてくるのだが、それが切ない。中学へ進むかっちゃんと小学に残る他のメンバー達。今ままでのようにかっちゃんと付き合えなくなると感じていながらも、最後の期間を懸命に過ごそうとする姿はいじらしい。

最近『銀の匙』を読んだけれど、この小説も似ている。『銀の匙』は時代が古いので親近感が沸きにくいけれど、こちらは親近感沸きまくりであった。何度も自分の小学生の頃を思い出し、ノスタルジックな気持ちになった。漱石は『銀の匙』を「子供の世界をよく描写している」と言って絶賛したが、本書も子供の世界をよく描写しているように思う。