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本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『人間失格』の朗読

 

人間失格 上巻 [新潮CD]

人間失格 上巻 [新潮CD]

 

  

人間失格 下    新潮CD

人間失格 下  新潮CD

 

『人間失格』をCDで聞いてみた。元々すごい作品が朗読によってさらにすごみを増している。朗読者がすごいのだ。手記の倦怠感を見事に表現している。このすごさは、聞いてもらって納得してもらうしかない。人間は失格なのに、朗読は合格という感じである。

いくつかの小説を朗読で聞いてみたけれど、ほとんどどれも素晴らしい。元々の素材がいいというのも理由であろうが、朗読者の力量が大きい。この『人間失格』においては、読むべきものではなく、聞くべきものとなってしまった。この小説が好きなのに朗読を聞いていない人はもったいない気がする。まだまだこの本楽しめますよと。

朗読が素晴らしいと絶賛した上で、内容についても書いてみよう。

まず、太宰の文章の上手さである。何を今更そんなことと思われるかもしれないけれど、そう思ったのだから仕方がない。文章が上手い人というのは、仮に1文が長くても違和感を感じさせないもの。太宰の文も長くなっても、読んでいて苦にならない。その箇所を引用して「ほらね」と言いたいが、やめておく。1文が長いから。

そして何と言ってもあの自虐性。もう駄目なんです、人間が怖くて怖くて仕方がありませんという気持ちを繰り返し記している。自分の秘密を知った友人に対しては、「彼の死を祈るより他はない」と言い、秘密を知られた自分ではなく、秘密を知った側の死を祈るのである!

そして、終盤には印象に残る言葉がつづく。

「人間、失格」
「まさに、廃人。」
「いまは自分には、幸福も不幸もありません。ただ、一さいは過ぎて行きます。」

ちなみに太宰は執筆活動を朝の9時から行っていたそうだ。こんなにも不健康な作品を健康的な朝や昼に書いている。

このCDは新潮社から発売されている。新潮社では他にも多くの文豪の名作をCD化している。『春琴抄』と『舞姫』も良かった。

舞姫 [新潮CD]

舞姫 [新潮CD]

 

舞姫は読むと難しく感じるけれど、聞いてみるとわかりやすい。朗読のおかげかしら。 

春琴抄 [新潮CD]

春琴抄 [新潮CD]

 

春琴抄は壮絶。目をつぶすシーンなんて見ていられないではなく、聞いていられないくらい。しかし、朗読は最高。リズミカルに読まれているが、それがとてもいい。絶妙のリズム。最後には谷崎自らの朗読も短い時間ながら録音されている。こちらの朗読はリズミカルのかけらもない。ただ谷崎の声を聞くことができて満足。