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本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『どちらとも言えません』

 

どちらとも言えません (文春文庫)

どちらとも言えません (文春文庫)

 

本書は、雑誌『Number』で掲載された著者のコラムをまとめたものである。『Number』はスポーツ雑誌である。なので、このコラムもスポーツについて書かれている。著者の洞察力、想像力、知識、そして長きに渡るスポーツへの関心故に、実に面白いものになっている。若い人では書くことができない内容と思う。

スポーツから話をどんどん膨らませていくのが、このコラムの特徴だ。時には、ヨーロッパの社会、文化、歴史にまで言及し、果ては早稲田の校歌にまで話は及ぶ。時々見せる鋭い分析には嫉妬すら感じてしまう。このような見方ができたらかっこいいなと。本書を読み終えた今となっては、あたかも自分が考えたかのように人に話すこともできるのだが・・・。

また、昔のスポーツの話題に触れることも多い。おかげで、自分が知らない、かつ知っていたら誰かに話したくなるようなトリビアな話を知ることができる。「巨人、大鵬、卵焼き」ならば若い人でも知っているだろうが、「江川、ピーマン、北の湖」というフレーズまであったことは知らないのではないか。

その江川を著者は賞賛する。「日本プロ野球史でナンバーワンの投手だったのではないか。」とまで言う。江川は嫌いだがと前置きするあたりが著者らしく、またこの前置きゆえに江川のすごさが感じられた。著者が勧めるように「江川卓の全盛期」をユーチューブで検索して見てみると、それはそれは素晴らしいストレートであった。

そして、何度も繰り返される日本や日本人を揶揄する発言。このコラムを通じてのことだけれど、著者は言いたい放題なのである。『どちらとも言えません』というタイトルから感じられる曖昧さは全くない。快刀乱麻である。だからこそ面白い。

最後のコラムも素晴らしい。「スポーツの楽しみは、語る楽しみなり」と題して、スポーツ観戦の楽しさを力説している。著者がスタジアムで放った野次なんて面白すぎて冷静さを保てなかったほどである。