読書記録(書評・感想)ブログ

本の感想や書評、粗筋、引用を自由に書く読書記録。1980年生まれ。

『アヘン王国潜入記』

 

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

 

本書は、著者がミャンマーの北部ワ州でケシを栽培し、アヘンを収穫するというノンフィクションである。この地域に滞在するのは難しいのだが、著者はそれをやってのける。村人達と共に寝起きをし、畑で農作業をする。種まきから収穫まで行い、滞在期間は半年を越える。途中の草取りにもしっかり参加するのはご愛嬌。終わりの頃には、立派なワ人となっていただけではなく、アヘン中毒にまでなっていた!

あまりにも文明から離れたワ州での生活。著者がマラリアにかかったと主張しても、彼らはマラリアを知らない。文字だってない。「文明度は低いが文化度はけっして低くない。昔の日本はきっとこうだったのだろうなどというノスタルジーさえ感じた」という著者のセリフが印象的。

そんな世界に飛びこんでいき、堂々と共同体に溶け込んでいく。数多くの登場人物が出てくるが、それを上手く描いている。普通に書くことも出来るのだろうが、著者のユーモアのセンスがそれを許さない。何度も笑わせてくれるのはいつもの通り。

教養もある。本書の都合上、ミャンマーやワ州の歴史の説明が度々なされるが、その度に著者の博識ぶりに触れることができる。語学も達者である。ワ人の子供達にワ語の発音まで教えてしまうのもご愛嬌だ。

本書の出来事は、1995年のことである。著者が早稲田三畳で生活をしている間にこのようなすごい経験をしていたのだ。早稲田三畳での生活も浮世離れしていたが、ワ州での生活もそれ以上に非現実的であった。

あとがきで自分の物書きとしてのスタイルを「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それをおもしろく書く」と述べているが、その3冠を本書でも達成している。