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本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『愚か者、中国をゆく』

 

愚か者、中国をゆく (光文社新書)

愚か者、中国をゆく (光文社新書)

 

中国の一面が覗ける一冊。本書は、香港からウルムチまでの旅行記である。単独旅行ではなく、著者と西洋人マイケルとの2人旅である。2人は恋人ではなく友人である。二人は、この長距離を列車で移動する。時代は、1987年である。しかしこの本を書いたのは、その旅のおよそ20年後である。旅を発酵させたのだろうか。

「切符」は、本書のキーワードといえるくらいにしばしば登場する言葉だ。切符を買う為に長々と窓口に並ぶこと。仮に自分の番が回ってきてもそこで切符が買える保障はないこと。切符がないことをあっさりと伝えれ、再び並ぶ必要があること。と、当時の鉄道での旅は過酷そのもの。

列車での移動を続けていく内に、二人の関係は悪化していく。

その中でマイケルは、著者へのレジスタンス(抵抗)としてなのか、それともただの趣味なのか、ドストエフスキーの「白痴」を読み始める。旅行中にである。一緒に旅行をしている相手が「白痴」を読み始めたらどうするだろうか。

「そんな難しい本読まないでよ、こんな時に。」
「もっと旅行を楽しまなきゃ。」
「それは、今読まなきゃいけないの?」

などと言うかもしれない。著者からのそんな言葉を期待した。

しかし、著者はサルトルの「壁」を読み始める

「星野、お前もか!」

と、強情の二人の旅の模様が面白い。

何度も中国に翻弄されながらも、旅の終わりに著者は達観する。「しかし人は努力をする動物である。人民は唯一自分に残された選択肢に対し、最大限の努力をする。その最後の選択肢こそ、私たちが放棄した時間と忍耐なのである」(p274)