読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『小説家という職業』

 

小説家という職業 (集英社新書)

小説家という職業 (集英社新書)

 

著者は、小説家である。本書を読んで、小説家のイメージ像が壊れた。著者は、珍しいタイプの小説家だと思うけれど、人としてもユニークな感じがする。周りに迎合しないタイプである。他人の意見はそれとして認めつつも、「僕の場合はこうなんだけどね」と涼しい顔で言うタイプ。なので人によっては(かっこつけている)と感じるかもしれない。

小説家になるには沢山の小説を読む必要がありそうだが、著者はそれを否定する。むしろ多くの小説を読むことでオリジナリティが生まれてこなくなるという。小説家になりたい人に対しては、「まず、小説を読まないことです」と大胆に言う。

その著者は、あっさりと小説家デビューを果たしている。そこに何の苦労話もない。著者は、「書くこと」をビジネスと捉えている。「僕は小説が書きたいわけではないし」と小説家を目指す人が聞いたら、地団駄を踏むようなことを平気で言ってのける。

最後の章では小説家になるためのアドバイスがあるが、これはオマケのようなものである。そもそも小説家になるにはどうすべきかという結論はこの本のまえがきにおいて述べられている。それは、「とにかく、書くこと、これにつきる」のだという。だったらもう読まなくてはいいや、とはならないのが本書の偉大なところ。まえがきを読んだらその先も読みたくなるのだ。そして、その期待も裏切らない。著者の考え方はユニークであり、そのしたたかさには驚くしかない。

言いたいことを言う著者は自分に自信があるのかと思ったが、そうでもないらしい。あとがきでは、「どのみち、自分は人間として生きる才能があるとは思えないし、また、僕よりも酷い人間も生きているわけで、人間は本当に不思議だ」と太宰みたいなことを言う。

僕自身も、この本を読んでいろいろな人がいるものだと思った。と同時に何だか自分を肯定してくれるような本でもあった。読み終わると、元気が出ていたのだ。