読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

本読みのはしくれ

本の感想や書評、本の案内ブログです。このブログは1980年生まれの男によって書かれています(受動態)。

『刑務所図書館の人びと』

文学・評論の本

 

刑務所図書館の人びと―ハーバードを出て司書になった男の日記

刑務所図書館の人びと―ハーバードを出て司書になった男の日記

 

アメリカの刑務所の図書館が本書の舞台である。舞台はユニークだ。そして、その図書館で司書を務めた人が刑務所図書館の様子を描きだしている。刑務所という狭い空間の中での出来事を描いたせいか、読んでいて息苦しさを感じる。

まず驚いたのが、刑務所の中で受刑者達に「プリズンブレイク」を見せるシーン。プリズンとプリズンをかけたのだろうか。何もそんな挑発的なドラマを見せなくてもいいと思うのだが。「よし。俺達も脱獄できる。Yes.we can」なんていう展開になったら、やっかいだろうにと余計な心配をしてしまった。実際に脱獄はないが、受刑者どおしのいざこざは頻繁に起こっている。

そんな恐ろしい場所でも著者は奮闘する。自分で自分のことを軟弱であると認めつつもがんばっている。そんな彼の思いが伝わるのか、受刑者の中には彼に対して心を開いていくものがいる。こういうシーンを見ると、人間は真摯につき合えばどんな人とでも分かりあえるのではないのかというナイーブな気持ちをもってしまう。

その後、ハッピーエンドになるのかと言えばそうではない。本書は小説ではない。現実である。受刑者の中には、出所後に銃殺されてしまう人もいる。さらに、ある女性は出所後、薬物の使用によりあっけなく死んでしまう。まるで、小説である・・・。こんなにもあっさりと人は死んでしまうのかとさっきまでの感動は一瞬にしてふっとんでしまう。

本書は、一貫して重たい雰囲気がある。また、アメリカの暗い一面を見せつけられることにもなる。けれど、読んで損はなかった。著者の視点は鋭く、想像力は豊かである。それが本書を非凡なものにしているのである。