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本読みのはしくれ

本の感想や書評、本の案内ブログです。このブログは1980年生まれの男によって書かれています(受動態)。

『紫式部の欲望』

文学・評論の本

紫式部の欲望紫式部の欲望
著者:酒井 順子
販売元:集英社
(2011-04-26)
販売元:Amazon.co.jp
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源氏物語は小説である。著者によると、紫式部は随筆という形式を選ぶことも出来たのだが、敢えて小説を選んだのだという。それは紫式部の性格が原因となっている。紫式部はあまりにも陰湿なそれを持っていたので随筆だときまりが悪いと判断し、小説を選んだのだ。「それは私が思っていることではなくて、私が作り話として考えたことなのよ。おほほ。私の思いだと勘違いしないであそばせ」という言い訳をする余地を残すために。

要するに、自分の気持ちをカモフラージュする為に小説で表現をした。だから源氏物語には紫式部の思い(欲望)が随所に見られるというのが著者の主張だ。どういった思いなのかが気になるところだが、本文を読む前に目次の項目を見れば分かってしまう。

連れ去られたい /ブスを笑いたい /嫉妬したい/プロデュースされたい /頭がいいと思われたい/見られたい/ 娘に幸せになってほしい/ モテ男を不幸にしたい /専業主婦になりたい /都会に住みたい/ 待っていてほしい/乱暴に迫られたい /秘密をばらしたい /選択したい /笑われたくない/けじめをつけたい/ いじめたい/ 正妻に復讐したい /失脚させたい/ 出家したい

紫式部よ。すごいことをばらされちゃっているぞ!随筆にしなかったのも納得である。「選択したい」というマイルドなものから、「正妻に制裁を」という過激なものまである。随筆のタイトルにこういうものが並んでいたら、ちょっと引いてしまうだろう。こういった思いを源氏物語の中に見抜いた著者は、この項目を一つずつ検証していく。

しかしよく見ると、それぞれの項目はこの時代特有のものではなく現代の我々にも理解できるようなものばがりだ。諸行無常というけれど、人間の本質的な性格はなかなか変わらないものなのかもしれない。