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本読みのはしくれ

本の感想や書評、本の案内ブログです。このブログは1980年生まれの男によって書かれています(受動態)。

『大好きな本』

文学・評論の本

 

大好きな本―川上弘美書評集 (文春文庫)

大好きな本―川上弘美書評集 (文春文庫)

 

すぐれた書評集はお得である。書評を楽しみつつ、読みたい本が見つかる。本書もすぐれた一冊である。紹介されている本は、エッセイや小説が中心である。普段あまり小説を読まないけれど、いくつか読みたい小説があった。いつかは、読むだろう。 

タイトルにあるとおり、全てが著者のお勧め本である。ゆえに、どの本も絶賛されているのだが、その描写の仕方が作家ならではである。決して陳腐な表現は使わない。また、「この本は絶対に読んだ方がいい」的な、押し付けがましさもない。ただ著者がいかにその本を楽しんだのかが繊細に綴られている。読んでいてここちがいい。 江國香織の本の書評では、こう言っている。 

小説を書くときには、このほかにも無量百万の、さまざまに選択すべきことがあるわけだが、江國さんにおいていちばんすばらしいのは、「どんな言葉をここにあてはめるか」ということに関する選択眼だと思う。
文章の中での、言葉の力の入れ方を決めるために、江國さんは漢字とひらがなを選ぶにちがいない。

本書を読んでいて、僕は同じことを、著者の川上弘美に対して感じた。言葉を厳密に選んで、出来るだけ自分の気持ちを正確に表そうとしているに違いない。小説を書く人の選言眼はすごい。僕の場合、言葉を選ぶ余裕などはなく、言葉を一生懸命に捜している感じである。あちらが10から1を選ぼうとしているのに、こちらは0から1を探そうとしているのだ。少し、不条理ではないか。

書評で紹介されている本を読み、それが本当にいい本であると、改めてこの書評集を読んでよかったと感じるだろう。しかし、それが面白くなく、むしろその書評の方が面白かったりすると複雑な気持ちになるかもしれない。