本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『イスラム飲酒紀行』

イスラム飲酒紀行イスラム飲酒紀行
著者:高野 秀行
販売元:扶桑社
(2011-06-25)
販売元:Amazon.co.jp
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日本人にとってはなじみの薄い中東。シリアやリビアが大変な状況であっても、どこか対岸の火事という印象がある。本書はそんな中東を中心とした紀行文である。より正確にはイスラム圏である。なので、中東ではない国も多少出てくる。

本書で著者が訪れる国は8つだが、これまでに多くの国を旅をしてきたことが分かる。バングラディッシュへ行く章では、こう記されている。 

 相棒の森清とぶらりとバングラディシュへ行った。

まるでお散歩気分でバングラディッシュへ行ったかのようである。

タイトルからも分かるとおり、本書は旅と酒がセットになっている。原則として酒が禁止されている国でも著者は酒を飲もうと奮闘する。そして、そんな著者の期待に応えるかのように酒が著者の前に現れる。「求めよ、さらば与えられん」である。酒が手に入らない時の著者の焦り具合と手に入った時の著者の喜びようが微笑ましい。ここまで酒にたいして無邪気になれるとは。

訪れた国で酒を探す。そこには現地の人との接触がある。彼の酒への思いが伝わるのか、彼らも酒探しを手伝ってくれる。「求めよ、さらば与えられん」である。そういう彼らのやり取りの中で、現地の様子が浮かびあがってくる。決して、ニュースでは知ることができない現地の様子が見えてくるのだ。また、著者なりの洞察からもそのことがうかがえる。

イランでは、国民が抑圧されているイメージがある。政府に不満がたまり、さぞかし息苦しい感じなのだろうと想像していた。しかし、著者によるとそうではないらしい。イラン人は明るく親切で日本人よりよほど人生をエンジョイしているように見えると言っている。現地に行かなければ分からないようなことが、本書では度々出てくる。

著者の酒への熱意に笑わされ、中東の酒文化も学べる、贅沢な一冊であった。