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本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『父の威厳数学者の意地』

 

父の威厳 数学者の意地 (新潮文庫)

父の威厳 数学者の意地 (新潮文庫)

 

『国家の品格』より10年以上も前に書かれたエッセイだ。国家の品格で繰り返される主張は、この本でも健在であった。情緒の大切さや武士道などは、この本でも登場する。 当時の日常が綴られていたり、著者の子供のころを振り返って見たりもする。また、自分の子供に対する思いも出てくる。まさに随筆である。 

著者が子供の頃に見た両親の会話が描かれてる。 銀座で飲んで酔って帰ってきた父に母が言うセリフである。 

「臭いですね」 「不潔ですからすぐに汗を洗いながしてください」 「今日も大金を貢いできましたか」

爆笑。とりわけ、「今日も大金を貢いできましたか」は痛烈な皮肉である。と同時に母の言葉のセンスの良さを感じた。皮肉を言うなら、こうでありたい。こういう光景が著者に影響を与えているのかもしれない。 このように笑わせることもあれば、著者の子供の頃を振り返り、しんみりさせる話もある。高校時代の恩師の話も最高であった。

ああいいエッセイだったなあと思いながら最後の編に突入すると、これまたすごい話が登場する。ハイライトが最後にやってきた。小学生の息子の検便について学校側と一悶着がある。検便をしなければ修学旅行に行かせない学校VS検便なんてけしからん、人権侵害だと憤る著者。

こういうものに勝てることはなく、結局、保護者の側が妥協することになるんだよと思っていると、様子がおかしい。なんと、最後まで初志貫徹。検便拒否を貫き、息子は修学旅行に行かないというとんでもない結末である。いやはや、見ていて爽快であった。

彼が生半可な気持ちで正義を主張しているのではないことに納得した。父の威厳、数学者の意地が最後に見れた。