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本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『翻訳教室』

翻訳教室翻訳教室
著者:柴田 元幸
販売元:新書館
(2006-02)
販売元:Amazon.co.jp
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本書は、東大で行われた翻訳の講義を再現したものである。講義は全部で9回。生徒には、事前にその回に訳すべきテキストが与えられる。そして、生徒は事前にそれを訳して提出する。その生徒の訳したものを叩き台に授業は進んでいく。授業では、生徒と講師が一緒になってより良い訳を考えていくのである。

英語は出来ることが前提なので、文法の話はほとんど出てこない。英単語や英文をどのように日本語で表現すればいいのかということが主な論点になる。その選択がとても難しい。英語では書かれている代名詞を、日本語では残すのかどうかを考える。前後に出てくる日本語との組み合わせを考える。その場の登場人物の気持ちにあう言葉を考える。英語で違和感を持たせたい時に、日本語ではどのように違和感を持たせたらいいかを考える。などと、考えることが多すぎて前に進まない感すらある。 

本書は、翻訳を学ぶだけでなく、小説の読みかたの参考にもなる。小説を読むことは、こんなにも深く読むことであったのかと考えさせられた。自分の小説の読み方の浅さを指摘されたような感じがする。また、日本語の文の書きかたも参考になった。言葉の繊細さに気がつかせてくれる。

本書の「まえがき」において、この本は翻訳に興味がある人が対象であり、読者は非常に限定されているだろうと著者は言っている。しかし、翻訳に興味がある人だけでなく、小説に興味がある人や英語に興味がある人が読んでも楽しめる本だと思う。実際に、重版もされている。