本読み

本の感想や書評、本の案内ブログ、かつ自身の読書記録です。1980年生まれ/男

『銭湯の女神』

 

銭湯の女神 (文春文庫)

銭湯の女神 (文春文庫)

 

彼女の本を読むのはこれで4冊目である。今回は、香港から帰ってきてからの東京での彼女の暮らしぶりが舞台のエッセイである。「転がる香港に苔は生えない」や「謝謝チャイニーズ」ほどのインパクトはないが、楽しめるエッセイだ。

こう言うと彼女には失礼になるかもしれないが、日本にいる彼女は普通なところがある。逆にいうならば、海外にいる彼女は普通ではない。香港に住むなんてなかなかできるものではないし、「地球の歩き方」に載っていない中国を女一人で旅することも出来ないでしょう。 

ところが、東京ではファミレスによく行くという。しかも、コーヒーで長時間粘る。また、ドラマを見ることまで書いてある。普通である。僕にもできそうだ。

しかし、変わった一面もある。タイトルにも含まれているが、彼女は銭湯に通うのだ。今時銭湯にいく女性は珍しい。面白いのは、銭湯に来る一人の女のひとの裸を絶賛していた記述。その女の人が、化粧をしている姿を見つけた彼女は、あなたは裸が似合うのにと本気でくやしがる。

また、入社当時に、上司から「これは大事だから」とあるものをまかされると、「そんなに大事なら自分でやってください」と言い返すあたりは異彩を放っている。心臓に毛が生えているようだ。かと思えば、香港への滞在を前に緊張をするなどという柔な一面を見せたりもする。掴みどころがない。

しかし、人間なんてそんなものである。掴みどころがある人間なんてロボットみたいで面白くないだろう。彼女の言葉を借りれば、「人間は生きているだけでどうしようもなく個性的」なのである。